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動機づけ面接(Motivational Interviewing)

こんにちは。仙台市青葉区のおざわ心理相談室です。

30度を超す蒸し暑い日が続きます。熱中症にならないよう、対策に気をつけていきたいですね。

皆さんは、動機づけ面接(Motivational Interviewing)をご存知でしょうか?

依存症治療によく用いられる技法なのですが、同僚から、「本を読むとわかるんだけど、実際に使おうとするとなかなか難しい」という話を時々聞きます。

概要や理論については、良い書籍が色々出ているので、ここで詳しくは紹介しませんが、とても効果的なテクニックです。特に、クライアントさんが「変わりたい」と思っていながら、変化への一歩が踏み出せずにいる時に、背中を押すようなサポートが出来るので、ぜひ使えるようになっていただきたいと思います。

今日は、動機づけ面接のちょっとしたコツをご紹介します。

 

動機づけ面接の大事なキーワードは、アンビバレント(ambivalent)

アンビバレント(両価性)とは、「相反する感情や考え方を、同時に心に抱いている状態」を表しています。つまり、アンビバレントな状態とは、心の中で「変わりたい気持ち」と「現状維持したい気持ち」の両方があり、その両価性の中で葛藤している状態、と考えることが出来ます。

例えば、タバコをやめたいと思いながら、行動を起こせないお父さんがいるとします。お父さんは、タバコは健康にも悪いとわかっているし、最近はタバコを吸える場所が減っていることもわかっています。さらに、家族から「お父さんはタバコくさい」と言われ、肩身が狭くなっています。タバコをやめた方が絶対良いとわかっている。でも一方で、やめたくない自分もいるアンビバレントな状態にいます。

このようなお父さんに対しては、まず、そのやめたい気持ちとやめたくない(変わりたくない)気持ちの両方を尊重しながら、丁寧に話を聞きながら、アンビバレントな気持ちを一緒に整理して、変わりたいと思う一番の動機を探していきます。

このお父さんの場合、セッションを進めていくうちに、家族を一番大切に思っており、とても子煩悩な方であることが、話からわかってきました。タバコをやめようかと思い始めた理由はいくつかあったのですが、最近の悩みとして特に、幼稚園に入ったばかりの娘さんが「パパ、タバコ臭いから嫌」と言ってお父さんの抱っこを嫌がるようになったのが、一番つらいことだとわかりました。

そうなると、タバコをやめるためのとても強い動機として、娘さんを抱っこする幸せな瞬間を感じることが使えます。タバコを続ける気持ちよりも、タバコをやめたい気持ちが大きく上回るので、アンビバレントな状態は崩れます。そして次に、タバコをやめるための具体的な行動を始めることが可能になります。

以上のように、動機づけ面接におけるカウンセラーの役割は、クライアントさんのアンビバレントな気持ちを尊重しながら、一番大切に思っている事柄=動機を見つける過程をサポートすることです。

いかがでしたか?
難しく考えすぎず、シンプルに考えるとやりやすいかと思います。

そして、実は、この動機づけ面接のテクニックは、自分を変える一歩を踏み出せない時にも使えます。

ちょっと迷った時は、アンビバレントな状態をセルフモニタリングしながら、自分の価値観を再認識してみてください。